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緑島の1日:緑島人権記念園区記録映画

台湾白色テロ受難者と緑島住民の口述に基づくドキュメンタリー

《緑島の1日》のドキュメンタリー映画で語られた総ての物語は、台湾及び緑島にとって無形の文化資産であり、世界広しといえども、小さな孤島に人の心を打つ物語がこれ程豊富に秘められている所は、他には見付からないことでしょう。

コピーライティング:曹欽栄
和訳:蔡焜霖

「緑島の1日」は、台湾で過去60年来白色テロの受難者と緑島住民の間の触れ合いを描いた長さ40分の記録映画です。次々に登場する人物によって語られる親子3世代に亘る物語が、台湾本島と緑島に跨って展開されます。受難者と家族の人達の人生遍歴は、緑島の忘れ難い思い出と結び付けられており、そして、それらの思い出は当時台湾の東の海に孤立していた緑島の人達の思いとも重なるものだったのです。

緑島が最初に白色テロ受難者を監禁する場所として使われたのが、強制労働キャンプ又は洗脳教育(思想改造)キャンプとしての効用を持つ「新生訓導処(1951-1965)」でした。次の段階では、高い塀に囲まれた閉鎖式の「国防部緑島感訓監獄(1972-1987)」、通称緑洲山荘に改造されました。最初の強制キャンプの段階においても、完全に閉鎖的な厳しい管理下に置かれ、当時の新生訓導処に監禁された政治受難者(緑島住民は彼らを新生と呼んだ)が、強制労働の合間に島の自然に接し、或いは島民と深い友情を結んだことは、今まで余り知られておりませんでした。

この映画の中の登場人物は、「新生」と呼ばれた受難者を主な語り手とし、他に受難者の妻や子、又は孫までが異なった世代の思い出を語ります。島民と新生との間では、畑作りから医療、演劇等を通じ、互いの心の触れ合いが語られ、他方日増しに高まる観光ブームで島を訪れる人達の、島の自然環境や人権記念園区見学の思い出話が沢山収録されてあります。この様に多角的に捉えられた映像で、身分が異なり、境遇も違う人と人との交流を通じ、一番真摯でナイーブな人間性を描き出したいと思ったのです。

《緑島の1日》の別冊の封面

次々と登場する人物が、思い出に浸りながらゆっくり歴史を語る時、或いは観衆との間で過去の経歴、現在の気持ちや将来への希望を共有し分かち合う時、私達は一緒に歴史の記憶の網を織り成すのです。この映画は先にシナリオが書かれ、それに基づいて製作されたものではございません。今までに撮られた多数の映像から取捨選択し、編集して作り上げられたものです。その為多くの貴重な映像を割愛せざるを得ませんでした。長年来協力を惜しまなかった受難者の方々や、多くの賛助者のお陰でこのドキュメンタリー映画を完成させることが出来ました。今後とも、更に多くの方々のご協力を得て、一緒に「記憶の網」を織り成して行きたいと切に願うのです。

受難者の方達が何時も口にするのは、緑島は彼や彼女等の人生の第2の故郷だということです。ある外省籍(戦後中国大陸から渡来)の受難者に至っては、いたいけな少年時代に逮捕監禁され、緑島こそが自分の唯一の故郷だとさえ言っております。昔の緑島の美しい大自然は、受難者の体を育み、心を慰めるのに大いに役立ったのでした。彼や彼女等が目下最も懸念しているのは、緑島の将来であり、自然生態の保護や、歴史記憶の保存問題等です。緑島の美しい海や山に惹かれて訪れる若い人達には、60年前もの昔、自分達と同年輩の青年男女が、この島で10年、15年からひどいのは30数年の長きに亘って監禁された歴史は、想像だに難しいことでしょう。このドキュメンタリー映画で語られた総ての物語は、台湾及び緑島にとって無形の文化資産であり、世界広しといえども、小さな孤島に人の心を打つ物語がこれ程豊富に秘められている所は、他には見付からないことでしょう。

もっと知りたい方:http://2009greenisland.blogspot.com/

登場人物
受難者
朱煒煌 1927年生まれ
柯旗化 1929年生まれ
胡子丹 1929年生まれ
胡鑫麟 1919年生まれ
胡宝珍 1924年生まれ
林恩魁 1922年生まれ
王荊樹 1922年生まれ
蘇友鵬 1926年生まれ
許 強 1913年生まれ
謝桂林 1920年生まれ
郭琇琮 1917年生まれ
謝湧鏡 1920年生まれ
ロシン・ワタン 1899年生まれ
葉盛吉 1923年生まれ
朱耀加 1921年生まれ
林立 1903年生まれ
黄温恭 1920年生まれ
蔡焜霖 1930年生まれ
辜顏碧霞 1914年生まれ
黄雨霆 1928年生まれ
施顯華 1930年生まれ
謝秋臨 1923年生まれ
陳鵬雲 1927年生まれ
盧兆麟 1929年生まれ
張振騰 1929年生まれ
江槐邨 1932年生まれ
葉雪淳 1930年生まれ
張幹男 1930年生まれ
郭振純 1925年生まれ
黄広海 1927年生まれ
黄石貴 1928年生まれ
張金杏 1932年生まれ
陳 勤 1922年生生まれ
林鏡明 1922年生まれ
邱奎璧 1924年生まれ
顏世鴻 1927年生まれ
閻啓明 1931年生まれ
陳孟和 1930年生まれ
歐陽文 1924年生まれ
鄧華勝 1926年生まれ
陳廷祥 1921年生まれ
郭衣洞(柏楊) 1920年生まれ
毛扶正 1932年生まれ
林耀金 1928年生まれ
黄仲華 1931年生まれ
王文清 1927年生まれ

受難者家屬
柯蔡阿李 張旖容 胡乃元

緑島住民
林登栄 田輝鴻 田份來 田亦生 蔡居福 田瑞鴻 陳建男 田珍珠 唐樹香
陳新伝 李賜福

観光客
李宏志 玫瑰 林松柏 宋涵 Rene Ziechner 黄亭潔 蘇維翎 褚縈瑩

コピーライティング:曹欽栄
和訳:蔡焜霖
印刷設計:江国梁

見返る茨道

——2009年【平和の詩と画大徴集】詩部の首獎
詩/江槐邨

光復は幸福なりや?
熱烈に迎へる祖囯は涯無き
悲慘なる悪夢!一老叟の步み来し
茨道を見返る

軍法處の看守所
寒波の朝謀反の廉(かど)で逮捕され母は悲しく吾を見送る
肥桶を抱きて眠りし檻の夜他人の尿を時には浴びて
散歩に拾ふ吸殼紙に卷きかへて密かに吸へば吹く煙淡し
冬の朝囲ひの庭に冷水浴び裁きを待ちたる同胞哀れ
法廷は世論を騙す飾り物生くるも死ぬも好き勝手にて
「差し入れ」とふ雑役の声に暖かき親の面影目蓋に浮ぶ
生と死は紙一重なり銃口を遁るればやがては浮ぶ瀬もあり
差し入れの肴を賞味せるよき友と永遠の別れとなりぬ
「先に行く」一言殘し烈士去る夜明けの馬場町熱血に染め
「親を賴む」言葉今尚胸を裂く白色テロの遺族の悪夢

緑島の新生訓導処(集中営)
手錠はめられ二人一組上陸艦に数日揺られて緑島に着く
重労働政治課学習繰り返し緑島に辛き月日を送る
吾を憂ひ病み臥す母を緑島に最後の別れ叶はぬを嘆く
緑島に「今日も暮れゆく異国の丘」歌ひ日暮れの台湾見詰む
春来れば帰る渡り鳥吾も何時春を迎へて帰る日ありや
春の山仕事に疲れたる隊友にやさしく微笑む野辺の白百合
暴動の罪かぶせられ隊友は送り返され馬場町に消ゆ
遡る魚見て萬年総統とふ吾も見れども囚人となる(愚民教育の一瞥)
仕事終え密かに海にて泳ぎたる罰に畑へ肥え汲み運び
営中に曲者蔓延り無き事も捏ち上げては官長に告ぐ
身心の虐待にやつれ気が狂ひ海に身投げをする人ありし
夜の更けを挽き臼挽きて大豆磨り豆乳作りて朝に嗜む
各隊に豚の鳴き声聞こえくる炊事場忙しく新年迎ふ
山に茅を刈りて畑に作る垣潮風防き野菜を植えたり
車なき島に頼るは足と肩担ふ重荷に歯を食ひ縛る
隊友の医者は家より器材請ひ患ふ友の治療に務む

新店の軍人監獄
緑島(しま)に二年流され新店の監獄に十年の青春(はる)を空しく過ごす
八坪の間に三十人閉ぢ込められ高き小窓に雀が覗く
沐浴とトイレも共に部屋の中日に三回の供水も乏し
沐浴は二日や三日に一度迴り配らるる水は洗面器(うつは)に二つ
同室に犬ころ潜み無き事を捏ち上ぐる手立ては緑島(しま)に劣らず
密告に反省室に禁錮され足枷着けらるる人も稀ならず
犬ころを殴り足枷と鎖纏ひ引き摺る音は聞くも重苦し
不敬問はれ手足縛られ宙ぶらりに担ぎ迴されて室友(とも)不具になる
散歩時に竹筒拾ひポンプ造り供水時に水を吸ひ出す
給水ダム台風に崩れ一週間酷暑に一日コツプ一杯の水
足枷着け処罰の労働に娑婆に出る鎖の音朝の靜けさ破る
獄內の裁縫工場に身を投ずミシンの響きに暫し吾を忘る(外役となる)
血を嗜むテロの共犯緑島と獄に冤罪漁り馬場町に送る

気高き緑島の白百合に捧ぐ
緑島の乙女は巡り出逢ひし新生に思ひを寄せて恋に焦がるる
一人緑島を離れ恋人の里を訪ひ密かに指輪を交はすとぞ聞く
事ばれて恋人ト│チカに打ち込まれ乙女は官長に結婚迫らる
恋人を救ふためにと泣く泣くを結婚諾ひ式の日に身罷る
悪業の宴の酔ひより醒めて知る初夜の花嫁亡骸となるを
哀れ緑島の気高き白百合汝の名は永遠に人人の胸に刻まる

夢追ふ旅(尋夢之旅)
老いて辿る緑島の旅咲き誇る白百合絶えて芒山を覆ふ
営舎は跡形消えて残壁の反共の文字昔を語る
そそり立つ海辺の巌荒波の砕けるしぶきは昔のままに
バスに乗り世界に稀なる海底(うみ)の温泉浴びて夜空の星を眺むる
時代(とき)の波緑島に押し寄せなつかしき長閑なる漁村の今は何処に
家家に鹿の鳴く声聞けずなり村人忙しく観光客迎ふ
集中営を見下ろす四維峯誰が飼へる羊か嶮しき崖に戯る
山に御座せる鍾乳洞の観音様苦難の群をやさしく見守る
緑島(しま)の浜に淋しく眠る隊友(とも)の塜雑(く)草(さ)茂り啼く海鳥(とり)の音侘びし

平和の絵入选秀作

【台東‧綠島學童組╱首獎】
Taitung & Green Island Students Group/First Prize Award

◆作品名稱:人權的代表─和平    作者:邱翎(台東縣公館國小,六年級)
Human Rights Is Peace, by Chiou Ling, 6th grade, Gong-guan Primary School, Taitung County


【台東‧綠島學童組╱優選】
Taitung & Green Island Students Group/Merit Awards

◆作品名稱:人權和平、紀念、綠島    作者:金念欣(台東縣新園國小,六年級)
Human Rights & Peace‧Memorial‧Green Island, by Jin Nian-Sin, 6th grade, Sin-Yuan Primary School, Taitung county


◆作品名稱:綠島人權紀念    作者:陳威廷(台東縣新園國小,五年級)
Green Island Human Rights Memorial, by Chen Wei-Ting, 5th grade, Sin-Yuan Primary School, Taitung county


◆作品名稱:綠島的回憶    作者:楊馥甄(台東縣新園國小,六年級)
Memory of Green Island, by Yang Fu-Jhen, 5th grade, Sin-Yuan Primary School, Taitung county


【台東‧綠島學童組╱佳作
Taitung & Green Island Students Group/Good Awards
◆作品名稱:綠島的人權和平紀念日    作者:陳宣如(台東縣新園國小,六年級)
The Music Festival In Green Island Memorial Park, by Chen Syuan-Ru, 6th grade, Sin-Yuan Primary School, Taitung county


◆作品名稱:和平的島嶼    作者:黃怡潁(台東縣新園國小,六年級)
Peaceful Island, by Hwang Yi-Ying, 6th grade, Sin-Yuan Primary School, Taitung county


◆作品名稱:和平與人權    作者:黃玟慈(台東縣仁愛國小,三年級)
Peace And Human Rights, by Hwang Wen-Cih, 3rd grade, Ren-Ai Primary School, Taitung county


◆作品名稱:綠島有美麗的魚、百合、梅花鹿    作者:鄭宇傑(台東縣立幼稚園,大班)
There are Beautiful Fishes, Lilies and Deers On Green Island, by Jheng Yu-Jie, L grade, Taitung County Kindergarten, Taitung county


◆作品名稱:紀念綠島和平人權    作者:謝語謙(台東縣新園國小,五年級)
Memorial to Peace And Human Rights In Green Island, by Sie Yu-Cian, 5th grade, Sin-Yuan Primary School, Taitung county


【全國組╱首獎
National Group/First Prize Award
◆作品名稱:追求和平,散播愛與大地    作者:林鈺軒(高雄市七賢國小,五年級)
Pursuit for Peace, Spread Love On the Earth, by Lin Yu-Syuan, 5th grade, Ci-Sian Primary School, Kaohsiung City


【全國組╱優選
National Group/Merit Awards
◆作品名稱:揮別陰霾、重現光明    作者:白翔升(基隆市暖西國小,五年級)
Farewell To Haze, Re-emergence Bright, by Bai Siang-Sheng, 5th grade, Nuan-Si Primary School, Keelung City


◆作品名稱:白色恐怖的悲哀    作者:陳宏睿(高雄縣前峰國小,五年級)
The Grief of White Terror, by Chen Hong-Ruei, 5th grade, Cian-Fong Primary School, Kaohsiung county


◆作品名稱:樂揚火燒島、百合頌人權    作者:蘇筠媃(基隆市暖江國小,五年級)
Music Flow The Island, Lilies Praise Human Rights, by Su Yun-Rou, 5th grade, Nuan-Jiang Primary School, Keelung city


【全國組╱佳作
National Group/Good Awards
◆作品名稱:詠白    作者:汪筱薔(桃園縣自立國小,六年級)
Memorial About White, by Wan Siao-Ciang, 6th grade, Zih-Li Primary School, Taoyuan county


◆作品名稱:自由和平的可貴    作者:張庭瑜(台中縣中華國小,六年級)
The Value of Freedom And Peace, by Chang Ting-Yu, 6th grade, Chong-Hua Primary School, Taichung county


◆作品名稱:綠島之美    作者:陳宥銜(宜蘭縣光復國小,六年級)
The Beautiful Island, by Chen Yu-Sian, 6th grade, Guang-Fu Primary School, Ilan county


◆作品名稱:別讓白色恐怖再度來臨    作者:劉芷菱(高雄縣岡山國小,五年級)
White Terror Never Come Again, by Liou Jhih-Ling, 5th grade, Gang-Shan Primary School, Kaohsiung county


◆作品名稱:世界一家    作者:歐晉華(台中縣華盛頓國小,二年級)
The World Is A Family,by Ou Jin-Hua, 2nd grade, Washington Primary School, Taichung county


【國際組╱特別獎】
International Group/Additional Adwards
◆作品名稱:Free and Happy Life    作者:Martincsàk Anna(6 age ,Stromfeld School, Hungary)


◆作品名稱:Family    作者:Nagy Ambrus(10 age,Stromfeld School, Hungary)


◆作品名稱:Life    作者:Simon Petra(10 age,Lajtha AMI, Hungary)


◆作品名稱:Happy Childhood    作者:Horvàth Dominika(10 age,Stromfeld School, Hungary)


◆作品名稱:Happy Childhood    作者:Somlyai Klaudia(10 age,Stromfeld School, Hungary)


◆作品名稱:Playing Together    作者:Fenyvsi Dàvid(7 age,Stromfeld School, Hungary)


◆作品名稱:Mummy Waits for You    作者:Hornyàk Emese(7 age,Lajtha AMI, Hungary)


◆作品名稱:Family    作者:Martincsàk Kata(10 age,Stromfeld School, Hungary)

趣旨

    三峰岩(曹欽栄 撮影)

人権園区は白色テロ時代の2ヶ所の政治犯監獄跡地を整備改築して誕生したものです。一つ目は台湾省保安司令部新生訓導処(1951-1965)で、冷戦時代に台湾がアジアで孤立していた境遇を反映しております。二つ目は、国防部緑島感訓監獄(1972-1987、緑洲山荘)で、この頃から、国際人権運動に携わっている方々が、台湾政治犯の救援に立ち上がりました。戦後の台湾で人権が抑圧された歴史が、この園区の旧獄舎や文献資料によって生々しく語られております。


    園区緑島の北東の角に位置しています(台灣游芸 提供)



人権抑圧の歴史・島嶼の生態・平和文化
国民党政権が1949年5月19日に戒厳令を布告したその翌日から、1987年7月15日に至るまで、台湾では世界史上最も長期間に渡った戒厳令下で、白色テロと呼ばれる恐怖政治が続きました。人民の生命や財産、及び自由の権利は一切剥奪され、抑圧と侵害を受けたのです。


本園区は台湾人民が長期の戒厳統治によって人権が抑圧され侵害された歴史を記念するメモリアル・パークであり、また人権の歴史と環境保護の考えを共に兼ね備えた展示の場でもあります。園区は人々が自由と民主を求めて奮闘した歴史の真相に依拠し、収集、研究、展示、伝達、および解説等のミュージアム機能を発揮して、白色テロ時代の政治監獄の跡地を修築して、台湾近代史の解明と研究に資するものであります。これによって人権及び環境権教育を推進し、国民の人権意識を高め、国際平和文化の交流を促進したいと願うものです。


民主的な暮らしの方式を守るためには、市民の一人ひとりが自分も人権の守り手であることを認識し、みんなが生存している地球環境に関心を持ち、更にみんなの幸せを約束する未来へ向かって一緒に努力することを、参観者の皆様と心がけたいと思うのです。

白色テロで政治犯を監禁した場所



    ◆(台灣游芸 提供)

台湾では38年に渡る長期間戒厳令が敷かれ、一般市民が軍法によってほしいままに逮捕され、受難者は一連の訊問、拷問、裁判を経て長年月の牢獄生活を強いられました。政治犯が釈放されてからも厳しい監視下に置かれた苦難の歴史は、1986年以降の戒厳令反対の民主化運動へと繋がってゆき、総統直接選挙運動、自由権・社会権・経済権の解放を追及する運動へと発展して、20世紀戦後の台湾人権史が形成されたのです。

上の表では白色テロ時代の軍法処、看守所、監禁・感訓の機構を列挙し、「政治犯」が逮捕から拷問、裁判、投獄、移管(矢印で表示)される状況を示しました。

園区全体のご案内

    ◆園区のマップ(台灣游芸 提供)
地球の悠久の生命史の痕跡が本園区の至るところで見つけられます。考古学的調査によれば、今から4千年前の大昔に、この島には先史時代の人類の活動の跡が発見されました。台湾のオーストロネシアン(南島語族)系諸族には先祖がSanasaiに起源するという伝説がありますが、緑島の元々の名前がSanasaiだったのです。緑島と先史時代のオーストロネシアン文化との関わりは、昔から考古学者や人類学者の関心を引き付けて止まないものがあります。


この地の漢民族住民は200年ほど前に、台湾西南の沖合いにある小琉球島から緑島に移住してきました。この園区の辺りから上陸した後、島の各地に拡散して4つの村落が形作られました。初期の建物は多くは島で伐採された木材の屋根とサンゴ礁から切り取られた石を積んだ壁で出来た低い平屋の民家でした。


日本が台湾を植民地として統治していた時代に、島の流麻溝付近に「火焼島浮浪者収容所」(1911~1919)が作られましたが、戦後中国国民党政権はここに新生訓導処(政治犯収容キャンプ)及び国防部緑島感訓監獄を設けました。戒厳令が1987年に解除された後は、法務部緑島技能訓練所と改称されました。これら異なる時代の刑務所は、それぞれ種々の政治宣伝の刻印を残していったのです。

    ◆公館鼻。公館鼻西側の砂利坂は、考古学調査で先史時代の遺跡であることが判明された。(曹欽栄 撮影)

    ◆公館村南側。公館村は園区の西側にあり、村の南にある田畑には先史時代遺跡の瓦礫や破片が混ざり込んでいる。(曹欽栄 撮影)

    ◆人権記念公園。人権記念公園には緑島人権記念碑が立てられ、白色テロ時代の政治受難者を記念している。(曹欽栄 撮影)


    ◆海巡署庁舎。海巡署庁舎内にある「居安思危」の岩は、当時の新生(政治犯)が積み上げた石垣である。(曹欽栄 撮影)

    ◆「滅共復国」のスローガン。国民党と共産党が内戦を戦っていた当時、「共産党を消滅し、国を復興しよう」という意味のスローガン。(曹欽栄 撮影)

    ◆三峰岩/将軍岩。将軍岩と三峰岩は園区入口のランドマークになっている。(劉振祥 撮影。台灣游藝 提供)

    ◆象鼻岩/鬼門関。国防部緑島感訓監獄正門向いの象鼻岩を受難者たちは鬼門関と呼んだ。それは生きて帰れる希望の持てない「新生訓導処」へ通じる場所であったから。(曹欽栄 撮影)

    ◆緑洲山荘石。1970年に建てられた緑洲山荘の前には、「緑洲山荘」と刻み込まれた巨石が立てられた。(曹欽栄 撮影)

    ◆国防部緑島感訓監獄(緑洲山荘)。国防部緑島感訓監獄全景。山荘とは名だけの政治犯を収容した恐怖の監獄であった。(潘小俠 撮影.台灣游芸 提供)

    ◆新生訓導処。1950年代の新生訓導処。(陳孟和 撮影)

    ◆毋忘在莒。「莒に在るを忘る勿れ」という成語は、2300年前中国の戦国時代に斉の将軍田単が莒県と即墨の2城を擁して燕と戦い、復国を果たした故事による。(曹欽栄 撮影)

    ◆緑島技能訓練所。赤い瓦屋根の建物は2002年12月31日に緑島から撤去した緑島技能訓練所(敬徳山荘)。(曹欽栄 撮影)

    ◆慈航宮。慈航宮は1985年に緑島指揮部第3職訓総隊が建立したもの。近くに新生訓導処時代に石炭殻を埋棄した場所がある。(曹欽栄 撮影)

    ◆流麻溝河口(海への出口)。園区東側を流れる流麻溝はこの河口から海に注いでいる。昔は水量が豊富で、鰻や種々の魚類、蝦などが取れた。(曹欽栄 撮影)


    ◆石切り場。緑島技能訓練所北側のサンゴ礁から西は緑洲山荘沿岸に及ぶ一帯は、昔新生訓導処時代の石切り場(政治犯が石を切りとって石垣や石壁の小屋を建てた)。(曹欽栄 撮影)

    ◆十三中隊。新生訓導処は全部で12個中隊で構成されてあったが、前後15年の間に政治犯や監獄管理に当っていた将校・兵卒の中から死亡者が出てこの場所に埋葬され、第13中隊と呼ばれた。(曹欽栄 撮影)

    ◆燕子洞。燕子洞は海蝕によってできた天然の洞穴で、当時政治犯はこの場所を演劇のリハーサル、死者の火葬などに使った。洞穴の中には今でも政治犯が石で積み上げた舞台が残っている。(曹欽栄 撮影)



    ◆牛頭山。牛頭山上から眺望した園区海岸の夕映え。(曹欽栄 撮影)